M/S処理は、マスタリングを行うときに必ず立ちはだかる壁と言ってもいいでしょう。
が、そんな難しい処理もWavesのCenterというエフェクトプラグインで簡単に行うことができます。この記事では、その使用例とともに解説していきます。
M/S処理とは?
MはMid、SはSideの略で、PANでいえば左右と中央の音量を調整する処理、と思ってください。
ガレージロックバンドの構成を例にすると、ボーカルとベースとドラムが中央で、その他の楽器は左右に分かれます。
ベースは左右どちらかですが、ボーカルは普通は中央にいます。ドラムも中央です。ギターは正面からみて右、キーボードは左が多いでしょうか。
このように、実際に演奏している位置に合わせてPAN振りをするのが定石ですが、ベースだけは低音を中央に置いた方が音が通るので、ほぼ中央に置きます。
ですが、ここで問題が生じます。
中央に音が集まりすぎると、肝心のボーカルが埋もれてしまうのです。これを解消するために、M/S処理はマスタリングに必須な作業といえます。
ボーカルが埋もれないようにするには?
シンプルに考えれば、オケ(楽器音)の音量を下げてボーカルの音量を上げるのも一つの手です。たしかにボーカルは強調されますが、曲全体の音圧が下がってしまい、全体的に迫力に欠ける印象になってしまいます。
そこで、M/S処理なのですが、具体的にエフェクトをかけている画像がこちらです。
私の場合、
- ボーカルとオケを、パスチャンネルで物理的に分ける(VocとM/Sというトラックです)
- ボーカルにマキシマイザーをかける(L3 UltraMaximizerがそれです)
- オケの音量を下げる(オケによりますが、-6.0~9.0db程度です)
- オケトラックにCenterをかけ、CENTERを下げてSIDESを上げる(ツマミの通りです)
- マスターにマキシマイザーをかけて曲全体の音圧を上げる(L3-LL MultiMaximizerがそれです)
このようにしています。
このスクリーンショットは、いわゆるサビの部分で、ボーカルはもちろん全音源が総動員で鳴っているところなのですが、CENTERプラグインのレベルメーターに注目してください。
真ん中にある縦のレベルメーターのLとRは上がっていますが、下にある横のCENTERはほとんど発生していません。
つまり、オケとしてはLとR(SIDE)を中心に音量が出ているので、中央(CENTER)はぽっかり音の穴が空いている状態です。
その空いた音の中央にボーカルを置くことで、オケに埋もれないような状況をつくることができるのです。
ただ、このようなM/S処理であっても、マスタートラックでは音圧が下がるため、マキシマイザーとコンプレッサーをかけて、ボーカルとオケを合わせた曲全体の音圧を上げつつ音を馴染ませるというエフェクトをかけています。
もっとシンプルなM/S処理としては、マスタートラック自体に直でCENTERを入れて、画像にある使用例とは逆に、CENTERを上げてSIDESを下げる、というのもアリでしょう。
まとめ
M/S処理の方法は様々あります。
憶える点はただ一つ、曲全体の音圧を下げずにボーカルが埋もれないようにするにはM/S処理が必須、ということです。
マスタリングの際に、今回の使用例をぜひ試してみてください。
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